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錆浅葱

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丁度いい塩梅

滝夜叉丸先輩の後ろには、七松先輩が張り付いている。
今日は3年生の実習訓練の為に、塹壕堀りや罠を仕掛けに裏裏山まで来ていた。
本当は今日中に終わらせる予定だったけど、いつもの調子で次屋先輩が迷子になったり七松先輩が暴走したりで、随分時間が押してしまっているのだ。
でも、そうなる事をどこかで予期していたのだろう。
滝夜叉丸先輩は全員分の干し飯を用意してくれていた。
野菜の切れっ端と、ちょっとの味噌を足して美味しそうな味噌水を作ってくれた。
てきぱきと夕食の準備をする先輩の背中には、べったりと張り付く七松先輩。
もはや妖怪。
でも、誰も気にしない。
だって、それがもう当たり前になってしまっているから。
七松先輩は、事あるごとに滝夜叉丸先輩の頭に顎を乗せて肩に腕をかけて寄りかかる。
まるで背負われているように見える。
最初は嫌がっていた滝夜叉丸先輩も、慣れてしまったようで無駄な抵抗はしない。
「先輩、重いです。」
少し身を捩りながら、全員分のお椀に味噌水をよそっていく滝夜叉丸先輩。
そんな抗議に耳を傾けるはずも無い七松先輩。
「あ、滝ー!私の椀には干し飯が少ないぞ!」
確かに、一番大きな七松先輩のお椀には汁の方が多いようだ。
「何を子供のような事を仰っているんですか!!椀が大きいからそう思えるだけで、全員同じぐらいです!」
キッと睨みつける滝夜叉丸先輩の気迫に、七松先輩も流石に一瞬怯む。
「だ、だって滝・・・私が一番体が大きいんだぞ?その分食べなければ動けないではないか!」
「もうそれ以上動き回らなくて結構!これを食べて罠を仕掛けたら塹壕の中で野営して、夜明けと共に学園へ出発です!授業開始までに戻りますからね!」
「うっー・・・・・滝夜叉丸のバカ!」
ギュッと腕に力を込めてしがみつく七松先輩。
あ、滝夜叉丸先輩の首が絞まる・・・。
顔を真っ赤にしてもがく滝夜叉丸先輩に、僕達はため息をついた。
「「「かわいそう」」」
「だったら助けに来い!!!!ぐっ!」
「滝のバカぁ!腹が減ってんだぞー!」
「ぐっお!」



食事の後、滝夜叉丸先輩は戦線離脱した。



ん、当たり前だ。
でもその夜、広く掘られた塹壕の奥で優しい七松先輩の声を聞いた。
僕達の事をとっても大事に、そして可愛がってくれる七松先輩。
だけどその声は、滝夜叉丸先輩にだけしか向けられないものだってみんな知ってる。
「ごめんな、滝夜叉丸。」
そしてその声に応える滝夜叉丸先輩の声も、後輩の僕達が可愛いって思うほど大人しくて優しい。
「わ、分かれば良いんですよ・・・。」
ちらりと覗き見た滝夜叉丸先輩の顔が赤かったのは、焚き火の所為じゃないって事もみんな知ってるんだ。

「よぉし、目を閉じて耳をふさいで寝るぞ!」

次屋先輩の小さな掛け声に、僕達も小さく返事をした。
金吾をはさんで、ギュッと隙間の無い川の字になって目を閉じる。
明日は朝から学園までマラソンだから、頑張らないと!
「「「おやすみなさい」」」
笑いながら呟けば、みんなと声が揃う。
それが何だか嬉しくて、楽しかった。


丑三つ時も過ぎた頃、頭を撫でる大きな手も。
はだけた上着を直して、ポンポンとあやす優しい手も。



僕達は知っている。


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プロフィール

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ハヂ
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女性
自己紹介:
忍たま出戻り組。以前は伝半・清団でしたが今回はこへ滝にすっころぶ。その勢いで文三木や長仙・留伊・雑伊が気になり始めました。(気が多い)
毎日夕方10分間の為に、色々と頑張れる。

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