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錆浅葱

小話とアニメ感想
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冬桜

今日はきりちゃんの過去を捏造してます^^;
過去捏造とか、きりちゃんを悲劇のヒロイン(?)に描くのきらいな方は、回避してください。((*´∀`))
 

あした
あした
またあした


そう言ってさよならしたあの子と、今日は会えなかった。
その次の日も、そのまた次の日も。
そんな日を繰り返していく内に、俺は気付いた。
もう二度と、あの子とは会えないんだと。


「きり丸、裏山から山菜取ってきて!」
「え~~~~!」
不満の声を上げた俺の頭に拳骨を落として、母ちゃんは頬を膨らませた。
「妹の面倒もろくに見ない癖に!文句ばかり言わないの!さ、行った行った!」
追っ払うように尻を叩く母ちゃんに負け、俺はかごを手にしてしぶしぶ立ち上がる。
「わぁーったよ!」
駆け出した俺が土間に降りた時、明るい声が響く。
「きりちゃん!出来たよ!」
嬉しそうに笑いながら差し出したのは、深い藍色の襟巻き。
「昨日くれたお花の首飾りのお礼ね。」
ふふっと微笑み、少し恥ずかしそうに頬を染める。
「一日で作ったのか!?すっげぇな!」
昨日、花を摘みに行きたいと言ったこの子と一緒に丘に登った。
村を見下ろす大きな桜の木がある、小高い丘。
桜の時期は過ぎていたが、一面に咲く小さな花たちは綺麗だった。
大喜びで花を摘む姿を笑いながら、俺は花の首飾りを作ってやったんだ。
妹が喜ぶから覚えた、少し恥ずかしい特技。
女ってみんな同じだ。
野に咲く花をただ編んだだけなのに、凄く喜ぶんだ。
『きりちゃん凄い!可愛いよ、これ!』
帰り道、にこにこと満面の笑みの子のこの首には、少し萎れた花の首飾り。
別れ際、お礼をすると言っていた。
それが、この襟巻き。
「ちょっと縫い目がグチャグチャで恥ずかしいんだけど・・。」
そう言われ、まじまじと見つめる。
確かに、少し引きつったりしていた。
でも、差し出す手には針で刺した傷が点々と見える。
「そうかー?俺は全然そんなのわかんないや!しかし、おまえすげぇな!」
早速襟巻きを首に巻いた俺の姿に、あの子は心底嬉しそうに笑ってくれた。
「おや、男ぶりが上がったじゃないかきり丸!」
明るく笑う母ちゃんに、恥ずかしくなって俺はそっぽを向いて走り出した。
「行ってくる!」
「気をつけてね!」
「暗くなる前に戻るんだよ!」
母ちゃんとあの子の声に、振り返らないで手だけ振って応えた。
きっと俺の顔は赤くなってただろうから。
んな顔、見せられるかってんだ!
俺は走って走って走って、誰にも教えたことの無い穴場にたどり着いた。
ここは誰も知らない山菜の宝庫。
沢山の山菜に、イヤイヤながら来たというのに何故か顔がにやける。
小遣い稼ぎに、明日町で売ろうかな?
最近戦が激しくなった所為か、飯炊きのおばさんが言い値で買ってくれるんだ。
いししっと思わずほくそ笑んだ俺は、手際よく山菜を摘んで行く。


一時ばかり山菜を積みまくった俺は、日が沈みかけている事に気づいた。
「おっと、いけねぇ!」
また母ちゃんに怒られちまう!
慌てて籠を背負う俺の耳に、今まで聞いた事のない轟音が響いた。
無数の馬の嘶きと、沢山の人の声。
地を響かせる低い声は、戦の時の勝鬨に似ていた。
そして、悲鳴。
どうして?
日が暮れようとしているのに、こんなに空が明るいんだ?
「火だ・・・・・火だ!!」
火が村を包んでいる!
俺がその事に気づいた時、既に村は火の海に包まれていた。
「か、母ちゃん!父ちゃん!」
浮かぶのは、大好きな人たちの顔。
あの火の中に居るかもしれない!
転がり落ちるように山を下る俺は、いつの間にか草鞋も脱げていた。
足の裏には石や木の枝がささる。
なのに、全く痛みを感じなかった。
息が上がりすぎて胸が悲鳴を上げているけど、足を止める事は出来ない。
急がないと!みんなが!!!

「母ちゃん!」

真っ赤な炎に包まれた村は、昨日までの平穏な姿が嘘のような地獄。
逃げ惑う村人を容赦なく切り捨てる、落ち武者たち。
恐ろしい武者鎧の向こう、ぎらついた目がこちらを睨みつけてきた。
「ひ!」
竦み上がる俺に向かい、馬が駆け出す。
足元に倒れた骸は、優しかった隣のおばさん。
あの子の・・・・お母さん。
「うわぁぁぁぁぁ!!!!」
泣き叫ぶ俺を追いかけてくる落ち武者。
相手は馬だ、逃げ切れるはずが無い!
殺される!殺される!
今までに感じた事のない恐怖が全身をガタガタと震わせた。
奥歯がガチガチと音をたて、膝が笑う。
上手く走れない俺の背に、ドンドン近付いてくる蹄の音。
怖い、怖い!
助けて!母ちゃん!
必死に家に走る俺の目に、業火に包まれた屋根が映る。
その時に感じた絶望は、全身が氷漬けにされたようだった。
芯の芯まで冷え切った俺の脚は、もう動かない。
火に包まれた家の間口。
妹を庇い、倒れた母ちゃんの姿が見えた。
その背中には、大きな切り傷。
広がった血の海、小さな妹の柔らかい掌は、ピクリとも動かない。
「かあちゃ・・・」
その時、いきなり強い力で背中を蹴られた。
「立て!逃げろ!走れ!!!!」
いきなり怒鳴られた俺は、ビクリと身体をすくめその声の主を見上げる。
そこには、忍び装束の男。

『逃げろ!早く!!』

男の目は、どこか悲哀に満ちていた。
しかし手にした刀は、血に濡れている。
その男の矛盾に満ちた姿に、俺は意味も分からずに安堵した。
もう一度母ちゃんと妹の姿を見つめ、俺は走り出した。
後ろでは、刃の交わる音が響く。
あの男、戦っているのだろうか?
何の為?誰の為?
分からない。
今目の前に広がるこの光景ですら、今は分からない。




「その後、お前が死んだ事聞いたんだ。」
大きな桜の木の前、俺は久しぶりに花の首飾りを編んだ。
小さな石を積み上げた、俺の家族とあの子の墓。
全員の墓標に首飾りを掛け、俺はひっそりと微笑む。
「あれから色んな事あったけど、俺は今幸せだぜ?」
沢山の友達が出来て、親みたいに大事に思ってくれる先生達が居て。
弟のように可愛がってくれて、時には意地悪したりする兄貴のような先輩たちも居る。
「俺は一人じゃない、一人じゃないからさ。心配要らないよ。」
でも時々、本当に少しだけ・・・だけど。
寂しい時があるよ。
会いたい時が、あるんだ。
目を閉じた俺の脳裏に、花を摘みに来たあの日が思い出された。
『大きくなったら、きりちゃんのお嫁さんにしてくれる?』
そう言ってはにかんだあの子は、薄桃色の花が大好きだった。
あの日。
あの子の首に掛っていた花飾りは、今墓標の上に。
久しぶりに涙が零れた。
膝を抱えた俺に、優しい風が吹く。
温かい風は、この時期には珍しい。
まだ肌寒そうな桜の木を見上げると、あることに気付いた。
「花が・・・咲いてる・・・。」
一輪だけ咲いた、桜。
それは、まるで。

頑張れ!

そう笑う、あの子の様で。
また、涙が溢れ出た。



あしたあした
またあした
また出会えるまで、何度も明日を重ねて
いつか、きっと


「嫁さんに、してやるよ。」



+++++++++++++++++++++++++++

きりちゃんの過去&初恋捏造でした。^^;
こう言うの好き嫌い分かれそうで、ヒヤヒヤですが・・・((*´∀`))
大丈夫でしょうか?^^:

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忍たま出戻り組。以前は伝半・清団でしたが今回はこへ滝にすっころぶ。その勢いで文三木や長仙・留伊・雑伊が気になり始めました。(気が多い)
毎日夕方10分間の為に、色々と頑張れる。

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