今日は青空が見えない。
綺麗な空を見たいのに。
こんなどんよりした低い雲など見たくないのだ。
「助けて。」
空がそう言ってる。
降り出した雨はきっと、空の涙だ。
頬に当たる雨粒は、酷く冷たい。
土の湿った匂いと、草の濡れた匂い。
空の涙は、大地を潤す。
なんて矛盾なんだろう。
誰かの悲しみが、誰かの糧になるなんて。
嫌な連鎖だ。
「風邪ひくよ。」
曇天も冷たい涙も、赤い傘に遮られる。
柔らかな声と、背中越しに感じるその温度。
いつもいつも、側に居た温もり。
「雷蔵・・・。」
「空はまた泣いてるの?」
「多分・・・ね。」
「そっか。」
濡れそぼった身体を、そっと抱きしめてくれる腕。
柔らかな拘束に、目眩がした。
「竹谷がごめんって、変なことつき合わせて・・・・だって。」
「別に頼まれたからやった訳じゃないのに、竹谷らしい。」
「三郎・・」
「雷蔵、俺たちは神様じゃないんだって。」
「え?」
「竹谷がね、人間は神様じゃないって言ったんだ。妙にね、その言葉がひっかかってね。」
「そう。」
「確かに、人は神になんかなれない。当たり前の事だけど、凄く・・・・衝撃的だったんだ。」
「衝撃?」
振り返り、見つめる雷蔵の瞳。
同じ顔が映りこんでいるのに、その表情は全く異なっていた。
「知らぬうちに、俺の心にも驕り高ぶりがあったんだよ。いつの間にか。」
そっと雷蔵を抱きしめ、その温かさに酔う。
「三郎、それは私の内に潜む鬼だよ。」
「鬼?雷蔵の中に?」
意外な言葉に苦笑し、その顔を覗き見る。
そこには微笑が浮かぶ。
「前に三郎が言った、私を帰点にして自分を取り戻すんだって。あの日・・・初めて手を汚した時に。」
「・・・・・。」
「雷蔵、この世の中にただただ美しいものなどないよ?皆沢山の業を引き摺って、必死に足掻いてる。その姿、苦悩そのものが美しいんだ。まっさらである事が綺麗なんじゃない。」
「雷蔵・・・・。」
「だからね、三郎。後ろめたさなんて、感じなくていいよ。」
にっこりと笑う雷蔵の強さに、ためらわずに身を任せた。
優しい声が、腕が、全てを解してくれる。
「三郎、大好きだよ。」
「ん、俺も雷蔵が大好きだ!」
「ちょ!苦しいよ三郎!」
「うん苦しいよ、雷蔵を想いすぎて胸が苦しい!」
「ひぃえ!」
さっきまであんなに積極的な事を言ってくれた癖に、真っ赤になる雷蔵が可愛い。
お前はなんて優しい鬼だ!
イミフ・・・・orz
ごめんくさい。(極刑)
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