滝6年で次屋が5年です。
ぼんやりしている先輩を見つけて、こっそり背中に張り付く。
気配も消していないと言うのに、全く気付かない。
いつもの傲慢ぶりはどこへ行ったのか。
あーあー、嫌になる。
手紙の返事が来ないぐらいで、こんなに落ち込まれちゃたまらない。
「先輩。」
「さ、三之助!お前いつからそこに!?」
心底驚いたのだろう、先輩は大きい目を更に見開いて振り返った。
しかもその目には、少し涙がたまってて・・・。
「ビ、ビックリさせるな!」
慌てて怒って見せてもばれてる、目元赤いし。
すんと鼻をすすって必死にごまかしても、分かりますから。
意地張る目を手で覆い、ギュッと抱きしめた。
いつの間にか俺の方が大きくなってて、先輩の身体をすっぽり包み込める。
俺の腕の中に納まった先輩の、頼りなげな肩は震えていた。
「離せ、さんの・・」
「嫌です。」
「・・・・お前な!」
「泣くでしょう、一人で。だから離しません。」
「ば、馬鹿もの!私は泣いたりなどしない!」
「うるさいっすよ。好きな相手が好きな奴の事の思って泣いてんの慰めてるんすよ?これ以上塩塗るような事しないで下さい。」
「何を言って・・。」
「気づかないフリもずるいですよ。俺はあんたが好きだ、手紙の返事も書かないような奴より大事にする自信ぐらいある。」
「黙れ!」
「また自分に言い訳ですか?仕事が忙しいからだろうとか?いくら忙しくたって一文でもいいから返すでしょう、本当に好きなら。」
「っ!!」
ぐっと俺の腕に爪を立た先輩は、きっと泣き出したんだと思う。
その顔は見えないが、伝わる振動で容易に察する事ができる。
「俺ならあんたを離さない、例え遠くに居たってその心を離す様な事しない。」
「っうるさっ・・い」
「当たり前ですよ。隙があったら俺は逃しませんよ。そんなに優しい男じゃありませんから。」
いつもいつもあの人には追いつけなくて、先輩の心も簡単に持って行った。
でも、俺は諦めるつもりなんかさらさらない。
隙があればすぐそこに付け入ってやるさ。
だって。
「俺はあんたに惚れてんだからな。」
絶対に奪ってやる。
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