「人を好きになるって、どんな感じなのさ?」
突拍子も無く問いかけて来たのは、神埼左門。
思い切りの良さは相変わらずだが、後先考えないその行動は周りの空気をよく凍らせる。
現に今も、くのいちに振られたばかりの同級生を前にしてのこの質問に、皆固まった。
「そ、そんなもの好きになってみないと分からないだろう!」
と言うか空気を読めよ!
そう顔に書いてある藤内の突っ込みに、作兵衛もまた同じような顔で頷く。
「えー。なんとなくで良いから言葉で説明できないのか?」
しつこく食い下がる左門に、藤内の頬がひくりと引きつる。
あーあ。
怒らせた・・・。
ちらりと隣の数馬に視線を寄こせば、同じように顔を顰めてため息をついた。
「藤内、きれちゃう・・・・。」
「もう切れてるかもしれない。」
「止めれる?三之助。」
「寧ろ止めたくない気がする。」
「えー!頑張ってよ!」
泣きつかなくてもいいだろうに。
普段不運に見舞われているくせに、こんな場面でうろたえる事もないだろう。
「左門!いい加減にしろよ!」
「な、なにをいきなり怒ってるんだ!」
「ふ、二人とも落ち着いて!」
「そうそう。」
「三之助、もうちょっと本気出せよ。」
作兵衛のどこか疲れた顔が、げんなりと項垂れた。
そんなにやる気なかっただろうか?
首をかしげる俺をはっとした顔で見つめる左門。
いや、こっちに話ふるなよ?
後ずさる俺の胸倉を掴みあげ、ずいっと詰め寄る。
「三之助なら分かるよな?人を好きになるって、どんな感じなんだ?」
部屋の隅で落ち込んでいた同級生は、他の友達に肩を叩かれている。
ああ、左門俺にも分かるぞ。
お前空気読めてない。
「なー、三之助!」
ガクガクと揺さぶられ、視界がぶれる。
大きく嘆息して、俺より小さい左門の頭をガッツリ掴んで引き離した。
「分かったから、そんなに揺さぶらんでくれ。」
その言葉にぱあっと顔を明るくした左門。
屈託の無いその表情に、藤内や作兵衛、数馬も何も言えずにため息をもらす。
得な奴だ。
しかし。
意外と俺の言葉を興味深そうに待っている面々に、ちょっと引きつる。
お前ら・・・・。
「それで!どんなだ?」
ワクワクした顔で身を乗り出す左門を押しとどめ、少し考えてから口を開いた。
「人を好きになるって事は・・・戦をしているようなものだ。」
場の空気が一瞬でしんと静まった。
あれ?俺も空気読めていないのか?
「それって・・・どう言う意味?」
訝しげに首をかしげる左門。
眉間に寄せた皺が、難解だと言っている。
よくよく見れば、他の奴らもだ。
こんな曖昧で、靄がかった感情を上手く言えという方が難しいのに。
俺は考えをめぐらせ、似合う言葉を捜す。
「そうだな・・・。相手を思うばかりが恋ではなかろう?時には策略を練り、罠を仕掛ける事だって必要だ。攻め時を探る時だってある。それに何より・・・。」
「何より?」
ずずっと身を乗り出すこいつらに、もう笑ってしまう。
「何より・・・。始めるのは容易いのに、終わらせるのは酷く難しい。」
ふと浮かぶ想い人の姿に、つい微笑む。
例えどんな結果になろうとも、今はこの戦終わらせる事はできない。
難攻不落の彼の人を、いつか落としてみせる。
今はその虚勢だけで、如何せん攻めあぐねているが、いずれ・・・。
「いずれは・・・、勝鬨をあげてやる。」
ニッと笑った俺に、左門以外は皆頑張れと言った顔で頷いてくれる。
しかし。
「良く分からん・・・」
一人首をかしげる左門に、今度は皆で声を上げて笑ってやった。
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ハヂは男前次屋を、激しく応援します!(笑)
書いている間に、日付変わってしまいました。+゚(゚´Д`゚)゚+。
拍手のお返事は、今日の夜しますので!!!
すみません!
そうだ!昨日の次滝にコメ頂けて嬉しかったです!
ありがとうございました^^お返事は夜にゆっくりと!((*´∀`))
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