背中の痛みは、徐々に酷くなっていく。
見事に打ちつけたものだと、自嘲気味の微笑みを浮かべた。
「仙蔵。」
遠慮がちな声をかけられ、振り返る。
ばつが悪そうな顔で頭をかく、文次郎の姿。
酷くむず痒そうな渋面で、ポツリと呟く。
「わ、悪かった・・・。」
愛想も何も無い素っ気無い謝罪に、文次郎らしいと思わず吹き出す。
「殊勝なお前など、気持ち悪いぞ。キモンジ!」
ニッと笑いながらその顔を覗き込めば、くっと真っ赤になって歯を食いしばる。
「ひ、人が素直に謝罪したというのに!何だその態度は!」
「だから、お前が素直だと言う事が気持ち悪いんだ!」
「くっ・・・・もう知らん!」
くるりと踵を返し、足並み荒く去っていく文次郎。
その背を見送れば、入れ違いで現れた影に気付く。
すれ違いざまに文次郎の肩を労うように叩き、こちらに視線を寄こす。
「長次。」
仙蔵の声に小さく頷き、すぐ側まで歩み寄る。
そしていきなり仙蔵の頬を、そっと包み込んだ。
「心配をかけるな・・・。」
「ん・・・、ごめん長次。」
すりすりと乾いた大きな掌にすりより、仙蔵はうっとりと目を閉じた。
実技の授業中。
文次郎が撃った砲弾が、防弾板を割ったのだ。
その破片を避けそこねた長次を庇い、仙蔵が木の上から落ちた。
激しく背中を打ちつけてしまった仙蔵は、一瞬息ができなかった。
慌てて駆け寄る同級生達の中、驚愕と悔しさ、そして恐怖。
大切な者を守れず、逆に傷つける結果になってしまったのだ。
長次のその複雑な心境を表した表情に、仙蔵は己の身体の痛みよりもその心の痛みに目眩がした。
「ごめん、ごめんよ。長次・・・。」
とっさに起こした行動は、きっとこの先も変わる事はないだろう。
長次が危ない情況に陥れば、きっと身を挺してでも守ろうとする。
この身に刻まれた、想いの所為で。
身勝手な自分の所為で、きっと長次は傷ついてしまう。
しかし仙蔵自身にも、どうする事も出来ない。
「きっと私は、お前を殺してしまうな・・・長次。」
震えた声と、揺れる髪。
夜風で冷えた身体をそっと抱きしめ、長次は微苦笑を浮かべた。
「そうだな、お前が私を庇って死にでもしてみろ。私の心は確実に死ぬ。」
「ん・・・・ごめん。」
泣き出しそうな仙蔵の謝罪、それを受け入れた大きな掌。
優しく髪を梳く手は、いつも以上に優しくて甘い。
溢れ出る愛しさに、仙蔵はきつく目を瞑った。
目じりから流れた涙に唇を寄せ、優しく囁く。
「お前に殺されるなら、本望だ。」
「ちょうっ・・・!」
「だが、どちらかと言えば共に生きたい。」
長次の言葉に驚いた仙蔵が、口を開く前に。
優しい微笑みを浮かべて、そう呟いた。
ぐうの音も出なくなってしまった仙蔵の、ぽかんとした表情があまりに愛らしくて吹き出す。
きつくきつく抱きしめながら声を上げて笑う長次に、真っ赤になった仙蔵が慌てて怒り出すのはもうすぐの事。
賑やかになった長屋の廊下に、今年初めての雪が舞い降りた。
『お前と共に生きたい。』
だからこそ、逝く時も共に・・・。
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長仙で拍手いただいていたので、今日の小話は長仙にしてみました^^
あ~。
ずっと胃酸過多なんですよ。
最近ちょっと少なくなってたんですが、今日は久しぶりに胃がむかむかしまう。+゚(゚´Д`゚)゚+。
気持ち悪いよ~~!
牛乳飲めば和らぐんですが、生憎切らしてました・・・
冷蔵庫に会ったグレフル100%ジュース飲んだら悪化しました。+゚(゚´Д`゚)゚+。
当たり前だ・・・・orz
大人しく寝ます^^;
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