「長次ぃ~!この団子美味いぞ!」
嬉しそうに笑い、三色団子の刺さった串を差し出す仙蔵。
長次は読みかけの本を膝の上で閉じ、団子を頬張る。
「美味いか?」
「ああ、美味い。」
「そうか!良かった!小平太のお勧めに間違いは無かったな!」
ニコニコと笑い、仙蔵も団子を頬張る。
いつもの済ました顔とは違う歳相応の素顔に、思わず微笑む。
これが本当の仙蔵だ。長次の前だけで見せる、素直な表情。
ふと、長次の目が仙蔵の額で止まる。
白い肌に走る、小さな傷。
顔に傷を作るなど、珍しい。
手を伸ばし、そっと傷に触れると驚いた目が見上げてくる。
「あ。」
「この傷、どうした?」
ちゅっと傷に口付て覗き込むと、長次の意外な行動に頬を染めた仙蔵。
恥ずかしそうに目を伏せて、微笑む。
「いや・・・その・・・長次と団子を食べれると思って、浮かれてたものだから・・・文次郎が投げて寄こした教材をよけ損ねたんだ。」
照れ隠しに髪を梳くしなやかな指先。
ちらりと長次を盗み見る姿は、堪らなく愛おしい。
「ちょ、長次!?」
裏返った声が響き、目を丸めた仙蔵。
そこには真剣な顔のまま、鼻血を流す長次の姿。
大丈夫なのかと慌てる仙蔵を、ぎゅっと抱きしめた。
「可愛い・・・・」
「・・・長次。」
抱きすくめられた挙句、いつもは聞けない言葉。
嬉しさのあまり、頬が緩みきる。
長屋に戻った仙蔵の、いつにないニヤケ顔に、文次郎は恐れ戦いたのだった。
PR