忍者ブログ

錆浅葱

小話とアニメ感想
MENU

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

魔滝のつづき

とりあえず、R-18とかになりませんでした。(笑)
でも少しだけこへがブラックになりました。
そして魔界之先生が、近い将来こへに命狙われそうな展開です。(^^;)
が、続きは書かないので魔界之先生は無事です。(そうかい)
前回の魔滝が受け入れがたかった方は、見ないでくださいね。
自己防衛★自己防衛(つのだ★ひろ的な使い方)







続きからどうぞ★




「楽しかったよ、じゃあね。」
当て付けの様に額に口付けられても、何の反撃も出来ない。
やっと自由になれたというのに、身体に力が全く入らないのだ。
雨戸が開け放たれ、明るい光が差し込む。
「おおーいみんなー。滝夜叉丸を学園に返してきてくれ。」
悔しい悔しい悔しい!
薄れいく意識の中、最後の力で睨みつけた顔はやはり笑っていた。

 

意識がはっきりしたのは、学園について暫く経ったころ。
夕焼けに染まる空をぼんやりと見上げれば、あまりに見慣れた風景に肩が揺らぐ。
しかし。
「っ!」
立ち上がろうと動いた途端、腰に残る鈍痛に息が止まる。
下肢に響いたそれは、先ほどまでの悪夢が嘘ではないと滝夜叉丸の思い知らせた。
「・・・・・っくそ!」
悔しさで目頭が熱くなる。
揺らぎ始める視界。
乾いた涙が再びボタボタとあふれ出す。
しかし、膝を抱え悔しさに泣き濡れる滝夜叉丸の耳に生徒達のにぎやかな声。
夕食の時間が近い。
皆食堂へ向かうのだろう。
こんな姿、見られたくない!
滝夜叉丸は力の入らない足で、泣きながら駆け出す。
途中躓きながらも、必死に駆けた。
言う事を聞かない体、痛む胸。
響く事後の気だるさ。
その全てが滝夜叉丸を追い詰めた。
「はぁはぁはぁはぁ・・・・」
逃げ込んだのは、委員会室。
滅多に使わない上、この時間帯ならば誰も来ない事は容易に想像がついた。
くたくたになった体を横たえ、滝夜叉丸は荒い息を整える事もなくぼんやりと昇った月を見つめる。
今日この身に何が起こったとしても、月は何も変わらない。
人の気持ちなど知らずに、美しく輝き続ける。
憎らしい。
月など翳ってしまえ、見たくも無い。
月など・・・・。
”お前は月が似合うね、満ち足りた盈月などではなく虧月だ。欠けた月、それがお前にはよく似合う。”
低く耳朶に響いたその声は、笑みを含んでいた。
あの男は、単純に楽しんでいたんだ。
抵抗も出来ないように縛り上げ、いたぶるだけいたぶって。
終始笑っていた。
一度も余裕をなくす事無く。
新しい玩具を手に入れ、ほんのひと時夢中で遊ぶ子供のように。
「・・・・・ぅ・・・っ!」
ドンドンと拳で畳を叩きつける。
それはあの男への憎しみからだけではない。
いくら未熟とはいえ、色に惑わされた己の卑しい身体が許せないのだ。
汚い汚い!汚れされた!
身を縮め泣きじゃくる滝夜叉丸の背に、かすかな月灯りが射す。
まるでそれを拒むように顔を背けると、破れたバレーボールが部屋の角に積まれていた。
修理をしようと集めはしたものの、結局手付かずになっていたもの。
滝夜叉丸は這うようにして積まれたボールを手にした。
クタクタになったボールは、まるで自分のようだ。
汚れて、汚くて、くしゃくしゃで。
もう誰も使ってはくれない。
誰も、見向きもしない。
「お前も、可哀相だな。」
私と一緒で。
大粒の涙が一つ、二つと染みを作る。
汚れの滲んだボールには、沢山の手の跡がついていた。
それは大きさで、誰のものかわかる。
一番小さな手型にそっと手を合わせてみる。
それはいつも一番小さな身体で必死に走る、金吾のもの。
手を引いてやることも、随分と回数が減った。
その隣には、四郎兵衛と三之助の手型。
そして、一番おおきな手。
「先輩・・・・。」
そっと手を合わせると、まだ滝夜叉丸の手よりも随分と大きい。
温かくて、優しい手。
少しささくれて、堅い手の感触が伝わってくる。
「先輩・・・・先輩・・・っ!」
もう触れる事が出来ない、怖くて出来ない。
穢れてしまった手で、触れる事などできない。
こんな愛しい手たちを、汚す事は出来ないから。
それに、触れた手から知られてしまいそうで怖いのだ。
知られることなど無いと分かっていても、恐れてしまう。
「いやだ・・・・・っ!もういやだ!」
つぶれたボールを抱きしめると、浮かぶ小平太達の顔。
笑顔が歪む、軽蔑の眼差しに変わっていく。
(嫌だっ、いやだっ!嫌わないでください!先輩!みんな、嫌わないで!)
一人嗚咽を漏らす滝夜叉丸。
悲痛な声が一人の部屋に響く。
「滝夜叉丸・・・?」
「っ!!!」
遠慮がちに聞こえてきたのは、今一番想っていながら一番会いたくはなかった声。
身をすくめたまま動けなくなった滝夜叉丸は、息を殺して唇を噛み締めた。
何を言われるのだろう、気付かれたのだろうか。
どうやったら切り抜けられる?どうやったら・・・。
必死に考えをめぐらす滝夜叉丸の動悸は激しく脈打ち、上手く息が継げない。
こんな状態の自分の事を、小平太はどう思っているのか。
恐ろしくて顔を上げる事もできない滝夜叉丸には、窺い知る事も出来なかった。
静かに近寄る小平太の気配。
この場所から逃げ出したい、いっそ消えてしまいたい!
指先が白くなるほどの力で己を抱きしめる滝夜叉丸の肩に、小平太の大きな手が掛る。
「滝夜叉丸、龍涎香の匂いがする・・・・・。それに、もっと別の匂いも・・・・。」
「やっ・・・!」
小平太の手を打ち払おうとした滝夜叉丸の手は、逆に捕らえられた。
キツク掴まれ、思わず悲鳴が上がる。
「いたっ・・・いっ・・・せん・・・ぱ」
「何があった?」
ぎりぎりと締め上げてくる激しさとは裏腹に、小平太の声は酷く優しい。
必死に振り解こうと爪を立てる滝夜叉丸のもう片方の手も、あっさりと捕らえられた。
「滝夜叉丸、質問に答えろ。」
淡々とした声が、逆に恐ろしい。
滝夜叉丸は震える口を開くが、声にならなかった。
泣きじゃくる滝夜叉丸を覗きこむと、蒼白になった顔で必死に口を開こうとしている姿。
小平太の胸の奥、チリリと黒い煙が上がる。
小さな火種はすぐに勢いづき、大火となって火焔を巻き起こす。
禍々しい炎が目の前にちらつく。
ああ、憎たらしい。
目の前で、傷つき震える滝夜叉丸。
憎らしい。
涙で泣き濡れた、秀麗な顔。
その全て、奪ったものがいる。
憎い。
すぅっと勢いを弱めた炎。
消え去った激情の跡には、一粒の種。
芽吹くまでそう時間は掛らないだろう。
「滝夜叉丸、すまない。怖かったろう?」
ひときわ優しい声で滝夜叉丸を抱きしめた小平太。
温かく、逞しい胸に包まれハッと息を呑む。
「だ、だめです!先輩!わ、私は・・き・・・・・き汚いからっ」
触れないで下さい。
消え入りそうな小さな声で呟き、肩を震わせる滝夜叉丸。
「汚くなんか無い、お前はいつだって綺麗だよ。」
柔らかな笑みを浮かべ、滝夜叉丸の抵抗ごと抱きしめる小平太の袖が濡れる。
どれ程一人で泣いたのか。
そう思った途端、燻る大地に落ちた種が一気に芽吹く。
ぞわりと小平太の全身を走ったものは、芽吹いた種の所為。
憎悪と言う名の獣。
「大好きだよ、滝夜叉丸。汚いなんて言ってくれるな・・・頼むから。」
「先輩っ!うっ・・・ひぃぅっ」
ぎゅっとしがみ付いてきた滝夜叉丸を力いっぱい抱きしめ、生まれたての獣を見つめる。
この胸の獣が育ったら、狩に行こう。
玩んでいたぶって、じわりじわりと追い詰めて。
滝夜叉丸の受けた痛みと苦しみを、味わうがいいさ。
この胸に巣食った獣は、きっと誰の言うことも聞かないだろう。

 

(私はお前にだけ懐く獣だから。)

 

高貴な龍涎香の香りが染み付いた滝夜叉丸の髪に口付け、小平太は静かに目を閉じた。
そう遠くは無い未来、醜い咆哮をあげる獣を胸に抱えて。




★補足
龍涎香は、媚薬みたいな効果があると言われていたらしいです。(^^)
魔界之先生は、塗るタイプの媚薬と合せて使ったようですね。
ふと、黒戸先生が作った媚薬だったりして~と妄想してました。
黒トカゲも強壮剤として扱われていたらしいので。
「あの薬の効果いかがでした?」
「んー即効性があってよかったですが、私としてはもう少し持続性が欲しいですね。」
とか縁側でほのぼの危ない話しとかしてて欲しいです。(笑)
ここまで読んでくださり、ありがとうございますvv
 

PR

Comment

お名前
タイトル
E-MAIL
URL
コメント
パスワード

Trackback

この記事にトラックバックする

× CLOSE

カレンダー

05 2025/06 07
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30

メールフォーム

感想などありましたらこちらから。

感想などありましたらこちらから。

プロフィール

HN:
ハヂ
性別:
女性
自己紹介:
忍たま出戻り組。以前は伝半・清団でしたが今回はこへ滝にすっころぶ。その勢いで文三木や長仙・留伊・雑伊が気になり始めました。(気が多い)
毎日夕方10分間の為に、色々と頑張れる。

バーコード

カウンター

× CLOSE

Copyright © 錆浅葱 : All rights reserved

TemplateDesign by KARMA7

忍者ブログ [PR]