年に一度の夏祭りなのに、4年生は三木ヱ門と滝夜叉丸の喧嘩などの不祥事、及び喜八郎の塹壕の処理などで居残り。
委員会で夏祭りに行こうと約束していたのに、と落ち込む滝。
とりあえず、帰ってくる頃に委員会室においでと言われていたので向かうと。
「先輩先輩!お土産の串焼きです!」
嬉しそうに四郎兵衛が駆け寄ってきた。
だがその手や口元には串焼きのたれが、べっとりとついていた。
「四郎兵衛、べとべとじゃないか!こっちを向け!」
手ぬぐいを引っ張り出し、ぐいっと四郎兵衛の顔を上向かせる。
丸い頬にも甘そうなたれが飛び散っている様に、滝夜叉丸は知らぬ内に苦笑をもらしていた。
「お前も2年生なんだぞ?金吾に見られたら恥ずかしいだろ?」
「・・・・・・はい。」
少し顔を赤らめて頷く。
部屋の中では三之助が食べているたこ焼きを、金吾が強請る姿。
鳥の雛のように口を開けて待っている。
「ほい。」
間の抜けた掛け声と共に、金吾の口の中にたこ焼きを放り込む。
「おいひぃれす!」
嬉しそうに食べる金吾の姿に、夏祭りが楽しかったのだと容易に想像できた。
みんな少し子気分が高揚しているようだ。
そんな中。
滝夜叉丸と四郎兵衛の姿をじっと見つめる小平太。
滝夜叉丸の姿に、やっぱり全員で行きたかったなぁなどと思いつつ・・・
ちょっと世話焼きすぎじゃないか?
と、少々妬いているようだ。
(串焼きのお土産だって、私が買ったのに。)
小さい、小さい小平太。
夏祭りは楽しかった、だがやはりみんなどこかで寂しいと思っていた。
それは下級生であればあるほど。
金吾と四郎兵衛は何故か二人で手をつないでいたし。
三之助は恐ろしい事に、一度も道に迷わず小平太の後ろをちゃんとついて来た。
が、恐ろしいほど背中を見つめられていたので周りの視線も痛かったのだが…。
大量に買い込んだ串焼き。
早々に買い物を終えて帰ってきたのだ。
みんなで食べるために。
(まだ一度も私を見てないよ、滝夜叉丸。)
小平太は串焼きを一本頬張り、腰を上げた。
どーん。
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・!」
「な、何してるんですか!?」
じとっと鬱陶しい眼差しで見つめてくる小平太。
言わんとする所を察した滝夜叉丸は、がっくりと肩を落とした。
大きなため息をつき、ふっと微笑む。
「大きな子供ですね。」
肩を揺らして笑いながら、小平太の口元についたたれを拭ってやった。
にんまりと嬉しそうに笑い、呆気にとられている四郎兵衛を抱え上げる。
「じゃ、みんなで串焼きを食べよう!」
「そ、そだ!とうもろこしもありますよ!先輩!」
ねーっと小平太と笑い合う。
しかし。
「お前達何してるんだ?」
ひくりと喉が鳴る滝夜叉丸。
「いや、ノリで・・・・」
「やっといた方がいいかなぁって。」
部屋の中では、口元にたれをつけた金吾と三之助が待ち構えていたのだった。
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