滝夜叉丸の態度は、明らかに余所余所しい。
いつものように振舞おうとしている笑顔は、余計に小平太の苛立ちを誘う。
昨日まではいつもと変わらぬ様子だった。
何があったのかは知らないが、どう言うつもりなのか。
「先輩、これで大丈夫ではありませんか?」
ようやくまとまった予算案を清書し、滝夜叉丸は微笑む。
小平太は嘆息して頷く。
「そうだな・・・。」
苛立ちを隠さない小平太の雰囲気に、滝夜叉丸は少し戸惑う。
何か怒らせる様なことを言っただろうか?
いつもと同じようにしていたつもりだった。
萎縮して俯いた滝夜叉丸。
小平太は意を決し、滝夜叉丸に問いかけた。
「なあ、滝夜叉丸・・・・一体何を考えているんだ?」
「は?」
じっと見つめてくる小平太の目は、恐ろしい程真剣だ。
目を逸らす事も誤魔化す事も許さない、そんな意志が汲み取れた。
「せんぱ・・・い」
「答えろよ。」
強い口調で畳み掛ける小平太に、ビクリと身体が震える。
「私に対しての態度がおかしすぎるだろう。何か思う所あるのなら、ちゃんと言え。」
滝夜叉丸の目の前に座り込み、睨みつけるような眼差しを向ける。
真っ直ぐな目は、滝夜叉丸を捉えて離さない。
恐ろしい。
その反面、今のひと時だけでも小平太の目に映るのは自分だけなのだと思う気持ち。
複雑な心境を、今ここで打ち明ける事など出来るはずがない。
小平太には想い人がいる。
そんな小平太に、しかも同性である彼に、想いを明かす事など出来ない。
ぐっと唇を噛み締め、逡巡する滝夜叉丸。
予想以上のうろたえ方に、小平太の苛立ちは尚更募った。
「滝夜叉丸、そんなに言いにくい事なのか?いい加減、私も腹が立ってきたぞ。」
怒りを隠そうともしない小平太に、滝夜叉丸の顔は今にも泣き出しそうになる。
着物を握る手が震え、小平太を真っ直ぐ見ることも出来ない。
伝えたい、だけど伝えてはいけない。
もどかしさと、苦しさ。
痛む胸が悲鳴を上げる。
「ごめ・・・・んなさ・・・」
「謝ってくれなんて、誰が言った?」
「先輩・・・私・・」
「答えろと言っている、滝夜叉丸。」
「・・・っ!」
握り締めた手を掴まれ、ぐいっと引き寄せられる。
今にも鼻の頭がくっ付きそうなほど近くから注がれる、強い眼差し。
もうどうしたら良いのか分からず、パニックになった滝夜叉丸はとうとう泣き出してしまう。
ボロボロと、自分でも驚くほどの大粒の涙に、流石に小平太も慌てる。
「た、滝夜叉丸!?」
「す、すみませんっ!」
ぽろぽろ流れる涙を必死に隠そうと拭う滝夜叉丸の腕を取り、小平太はばつが悪そうに笑いながらそっと抱きしめた。
「・・・・悪い・・・、そんなに怖かったか?」
確かに腹を立てていたが、まさか泣かれてしまうとは思いもしていなかった。
あの滝夜叉丸が、泣くと言う事が想像できなかったのだ。
「滝・・・・そんなに私が嫌か?」
思い当たる節はないが、万人に好かれる自信もない。
どこかに滝夜叉丸の気に入らぬ所があっても、仕方がないだろう。
そう納得し始めた小平太の腕から慌てて顔を上げた滝夜叉丸が、勢いよく首を振った。
「ち、違います!先輩に対して、いや灘と思ったことなどありません!」
必死に否定する滝夜叉丸の姿に、呆気にとられる。
では一体何がどうなって、あんな態度をとったのか?
小平太の疑問は深まるばかりだ。
「じゃあ・・・何故あんな態度を?」
改めて問われた滝夜叉丸は、もう一度言葉につまった。
つ、つづきます^^;
この話も、きっと後で加筆修正しますので。+゚(゚´Д`゚)゚+。
ううー。><;
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