今日は、用具!
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眠気を誘う午後の授業。
あくびを噛み殺し、ふと外を見れば一年の授業風景。
(うちの後輩はいるかな?)
井桁模様の初々しい装束姿の一年生達。
前を走る教師に、必死についていく。
コロコロと小さい身体で走る沢山の生徒の姿は、やっぱり可愛い。
それが委員会でよく接している後輩なら、尚の事だろう。
(お、いたいた!)
見慣れた顔を発見し、自然と顔がほころぶ。
前の同級生を抜こうと、一生懸命に走る姿が微笑ましい。
(頑張ってるなー。今日の委員会の時に、飴でもあげようかな?)
ふふっと思わず微笑んだ時、バシンと乾いた音が響いた。
「富松・・・・一年と一緒に走ってくるか?」
「いえ・・・・・スミマセンでした。」
どっと笑いの起こる教室。
ああ、今顔が赤いだろうな。
恥ずかしい事この上ない。
静かに怒っている教師に頭を下げ、どうにか授業を受けさせてもらえた。
もう余所見はすまい。
あいつらの頑張りが気になるが、委員会の時にでも聞こう。
筆も進まず、眠気も頂点だが頑張らねば。
ふらつく頭を支え、落ちそうな瞼を必死に持ち上げる。
委員会まで、あと数刻。
マラソンを頑張ったあの二人に、真っ赤な飴をあげよう。
きっと、酷く嬉しそうに笑うんだ。
それを見た食満先輩は、もっと嬉しそうに笑うはず。
容易に想像できてしまうその光景に、ひっそりとほくそ笑んだ。
早く終わんないかな。
「しんべヱ~。さっき気付いた?」
「うん、富松先輩が見てたでしょ?」
「そうそう!だから僕、頑張って走っちゃった。」
「僕もだよー!」
「今日もまた飴くれるかもね。」
「きっとくれるよ~、また『頑張ってたな!』って言って。」
「楽しみだね~。」
「うん、楽しみー!」
「早く委員会室に急ごうよ、しんべヱ!」
「あ、まってー!」
「って、うちの後輩可愛くないか!!!????」
一人身悶える留三郎の姿。
「うん、そうだね。」
ずずっとお茶をすすりながら、適当な相槌を返す伊作。
留三郎の後輩に対する盲目振りには、もう辟易としていた。
嬉しそうに今日の委員会での後輩たちの姿を、誰も聞いていないのに話し続ける。
これには困ったものだ・・。
そう嘆息し、伊作はまだまだ続きそうな後輩の自慢話に苦笑をもらしたのだった。
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