今日の小話は、久しぶりに滝の夏休みから離れます。(^^;)
ね、何事も倦怠期ってありますし。(をい)
くっついていないこへ滝です。
「あの子小平太に気があるね。」
そんな声が聞こえてきた。
ざわりと騒ぐ胸。
渡り廊下の向こう。
中庭にある池を覗きこむ二人の上級生。
それは、同じ体育委員会の先輩七松小平太。
隣には同じ6年の立花仙蔵。
先ほどの声は、仙蔵の声。
面白がるように小平太の顔を覗きこむ。
「どうするんだ?私はなかなか可愛いと思うがな。お前にも似合いそうだぞ?」
「面白半分で人の恋路に首突っ込むなよ。」
笑いながら答える小平太に、少しホッとする。
すぐにその話に乗ることはなかったから。
柱に身を隠しながら二人のやり取りを盗み聞く滝夜叉丸は、気配を消して佇む。
自分の胸が抱くこの身を切りそうな想いの正体、それは恋慕。
小平太への恋心。
それに気付いたのは、つい最近のこと。
覚えたての感情、まだ柔らかい生まれたての恋。
今はまだ、潰されたくない。
まだもう少し、この胸で暖めさせて欲しい。
ぎゅっと胸元であわせた手が、着物をきつく握り締める。
(お願い・・・・お願いです・・・・。まだ、もう少し。)
唇を噛み締め、祈るように目を閉じた滝夜叉丸の耳に響くのは。
「ま、私も前から気になってたしな。」
残酷に告げられた、その答え。
滝夜叉丸の胸の奥、何かが割れてしまう。
その衝撃が全身を駆け抜けた。
じりじりとその身を焼く。
堪らずその場を走り去る滝夜叉丸。
必死に足を速め、逃げ場所を探す。
ぐんぐん過ぎていく景色。
学園中委員会で走り回った滝夜叉丸の目には、その全ての景色に小平太との思い出がある。
嫌だと首を振り、裏山へ向かい走り抜けた。
どこへ行っても同じだ、今のこの感情からは逃げられないのだから。
きりりと締めつけてくる小平太の言葉。
柔らかな想いが、悲鳴を上げる。
「っ・・・・・うっ・・・・ふぅ・・」
堪えきれない嗚咽が、食いしばった歯から漏れた。
情け無い声が、一層滝夜叉丸の自尊心を傷つける。
ぼろり溢れた涙を拭った時、大きな木の根に足を取られて転ぶ。
地面に身体を打ちつけた衝撃と、顔を削られた痛み。
「っ!!!」
一気に鼻を突いた土の匂い。
なんて惨めなのだろう、今のこの自分の姿は。
「・・・バカだ・・・私は・・・っ大ばか者だ!」
委員会の先輩に、しかも同性の男に恋心を抱いて。
その上、相手に想い人が居た。
勝手に思いを募らせて、勝手に傷ついて、それが苦しくてボロボロ泣いて、挙句泥にまみれて蹲る。
惨め過ぎて、もう笑ってしまう。
滝夜叉丸は歪んだ笑みを浮かべて、痛む胸を押さえて蹲った。
哀れむのは自分じゃない。
この胸の、柔らかで暖かな想い。
折角この胸に生まれてくれたというのに、すぐに潰されてしまった初めての恋心。
儚く脆く、激しい痛みを伴いながら消えていこうとする初恋。
ほんの少しだけの間だったが、この胸に確かに育ってくれていたのに。
「ごめん・・・・・・ごめんなっ・・・・・・・」
大粒の涙と、悲痛な謝罪。
震える肩は、頼りなく揺らぐ。
「っ・・・ぅ・・・・・ごめん・・・・・ひぅっ・・」
夜の帳が下りる頃になっても、その背は小さく震え続けた。
珍しく、滝の片想いっぽく。
まあでも、逞しい妄想(想像)力をお持ちの方なら、察してしまったはず!
そう、仙蔵と小平太の言う『あの子』の正体。(笑)
ええ、あの子ですよ。
あの子しかありえませんよね!(笑)
だってウチこへ滝サイトだし!(爆笑)
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