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錆浅葱

小話とアニメ感想
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珍しく、会計で小話。




ああ、眠い。
三木ヱ門のあくびは、もう誰にも移らない。
それもそうだ。
全員撃沈してしまったのだから。
左門や佐吉、団蔵までならまだ分かる。
だが、忍術学園一ぎんぎんに忍者している潮江文次郎までがその仲間に入っているのはどう言うことか。
どうにか与えられた仕事を終えた佐吉と団蔵がまず眠ってしまった。
二度三度と床で頭をぶつける様を見た文次郎は、二人を抱えそろばんをはじく。
異様とも見れるその光景、だが4日連続徹夜が続いている頭は気にしない。
むしろ、父親に抱かれた子供のようで微笑ましくさえ見える。
目をこすりながら思わず微笑んだ三木ヱ門は、はっと現実に引き戻される。
今、何を考えた?
親子みたいだ、などと一瞬思った自分ももう限界が近いのだろう。
大きく嘆息し、眠っていないと呟く左門の肩をきつく揺さぶった。


それからすぐに、左門が落ちた。
白目を剥いた顔は、恐ろしい。
三木ヱ門は静かに瞼を閉じてやる。
「安らかに眠れ・・・・。」
左門が終えた会計帳簿を片付け、三木ヱ門は文次郎と自分の手元に残った帳簿を目で数えた。
文次郎と三木ヱ門の帳簿は、左門たちよりも多い。
上級生なのだから仕方が無いが、左門とは一学年の差。
時折納得いかなくなる。
しかし。
三木ヱ門と文次郎では、また倍以上の差があるのだ。
そんな事は言えない。
厳しいように見えて、何かと気を使い一番仕事を請け負うのは文次郎。
それに気付いているのは、三木ヱ門だけ。
ならば、自分は少しでも文次郎を支えてやるだけだ。
三木ヱ門はそう決めていた。
「三木ヱ門、どうだ?」
疲れのたまった顔で問いかけてくる文次郎。
三木ヱ門はその肘に敷かれた帳簿が、全て計算を終えたものだと気付いた。
にこりと微笑み、一冊の帳簿を手にとる。
「これが終われば、私も全て終えます。先輩は少し休まれてください。これが終わったら下級生を送っていきましょう。」
「そうか、じゃあすまんが少し休ませてもらう。」
「はい。左門もお願いします。」
机にうっぷした左門を抱え、文次郎は三木ヱ門が仕事をしやすいようにその場を片付けた。
「ありがとうございます。」
「構わん。」
壁を背に座りなおした文次郎は、寝かせておいた佐吉と団蔵を再び抱きかかえてやる。
転がされていた左門は座り込んだ文次郎の足を勝手に枕にして高いびきを始めた。
顔を顰め、首を回しながら大きく嘆息した文次郎。
余程疲れがたまっていたのだろう、すぐに寝息が聞こえてきた。
全員固まって眠る姿は、やはり微笑ましい。
「あー、頭がおかしくなってる。」
バキバキにこった肩をもみ、残りの帳簿を引っ張り出す。
後一冊なんて嘘。
本当は5冊残っている。
文次郎の手が最後の帳簿に伸びた時、とっさに膝の下に隠した。
自分の分を終えればきっと、文次郎は三木ヱ門の手元に残る分を手伝おうとする。
それだけは嫌だった。
誰よりも沢山の仕事をこなしているのに、自分の分まで背負わせることだけは絶対にしたく無い。
だからこそ。
「夜明けまでに終わらせてやるさ!」
静かに、だが力強く宣言した三木ヱ門は気合を入れて帳簿を開いた。
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ハヂ
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女性
自己紹介:
忍たま出戻り組。以前は伝半・清団でしたが今回はこへ滝にすっころぶ。その勢いで文三木や長仙・留伊・雑伊が気になり始めました。(気が多い)
毎日夕方10分間の為に、色々と頑張れる。

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