秋空を見上げれば、いわし雲。
たなびく様は、どこか懐かしい。
胸が、少し焦がれた。
「どうした?三木ヱ門。」
「滝夜叉丸」
珍しい奴から声をかけられたものだ。
微苦笑を浮かべながら振り返れば、妙に大人しい滝夜叉丸の姿。
「お前こそどうした?何だかいつもと違うぞ?」
「質問に質問で返すな。」
機嫌も悪いのか。
「突っかかるなよ、機嫌悪いならわざわざ私に声をかけなくても良いだろう?」
「・・・・・・・・はぁ・・。」
嘆息し、俯く滝夜叉丸。
「すまん。」
そのしおらしい態度にも、目を丸める。
「お前・・・本当に大丈夫か?」
心底心配になってきたんだが・・・。
「ちょっと聞きたい事があってな・・。だがお前も何か考え事しているようだったから・・・・その。」
遠慮しただと・・・?
あの滝夜叉丸が!
「いや・・・・べつに・・・・・・・・そ、空を見てただけだから・・・。」
「そ、そうなのか・・・。」
一体なにを聞きに来たんだ?
全く意味が分からない・・。
ぶしつけな視線にも気付かぬほど、滝夜叉丸は思い悩んでいるようだ。
「どうしたんだ?」
なかなか口を開かない滝夜叉丸に問いかけると、ちらりと盗み見る上目遣いの目。
不本意ながら、少し可愛いと思ってしまう。
いつもいがみ合っていると気付かないが、本当に顔だけはいいのだ。
ま、性格も癖があるだけで悪い訳じゃないがな・・。
こちらを伺うような視線に耐え切れず、その顔を覗き込めばうっと引きつる。
こんな反応を、あの先輩は可愛いと思うんだろうな。
そんな不毛な事を考えていると、つい自分の想い人が浮かぶ。
あの人も、こんな顔したら少しは可愛いとでも思ってくれるのだろうか?
いや、滝夜叉丸だから可愛く見えるのだろう。
私では無理か。
「み、三木ヱ門・・・」
意を決したのか、顔を上げた滝夜叉丸の言葉を待つ。
「お前、潮江先輩と・・・その・・。恋仲なんだろう?」
「な!!!」
単刀直入な問いかけに、思わず絶句した。
なんて事を聞くんだ!
そう言うことは、察していても言わないのが礼儀だろう!
「な、なに・・・を!」
「すまん!だが、それを確認しないと、聞けないから・・・」
慌てて弁解するその姿は本当に必死で、からかおう等と思っている顔じゃない。
そんな殊勝な姿を見せられたら、こちらとて逃げる訳には行かない。
「・・・そうだ。私と潮江先輩は・・その、想い合っている・・・。」
顔に血が上る。
きっと私の顔は今真っ赤になっているだろう。
ああ、恥ずかしい!
それもあの滝夜叉丸の前で・・。
「それがどうした!」
挑むように滝夜叉丸を見れば、同じように顔を赤らめて俯いていた。
いつも自信に溢れたその表情は、捨てられた子犬のように心許ない泣き顔。
本当に今にも泣き出しそうだ。
「すまない・・・三木ヱ門。こんな事・・・言いたくないよな。」
「え?いや・・・いい・・よ。大丈夫だから・・。」
あれ?凄い気を使うぞ。
「それで・・・その。聞きたい事とは・・。」
続きを促せば、余計赤く熟れた頬。
一体どんな恥ずかしい事を聞こうって言うんだ。
動悸が激しく高鳴り、手に汗までかいてしまう。
「あのな・・三木ヱ門。口淫って・・・・した事あるか?」
「コウイン・・・・・・・・・・・こ!こう・・いんって!!!」
「な、ないならいいんだ!!!!す、すまん!忘れてくれ!!」
そう叫ぶように言うと、滝夜叉丸は脱兎の如く逃げ出した。
いや、今置いて行かれても・・・。
走り去る滝夜叉丸の背中を追いかけようか悩んでいるうちに、その姿は見えなくなる。
ど、どうしよう。
口淫ってあれだよな・・。
口で、奉仕するって言う。
し、したことあるか!
この間・・・・、やっと・・。
ってなにを思い出してるんだ私は!!!!
「三木ヱ門、なにを一人悶絶している?」
「ひぇぇぇぇえぇぇぇ!!!!!」
思いっきり変な叫び声を上げてしまった。
潮江先輩のちょっと呆れた顔に、泣きたくなる。
お前のせいだからな!滝夜叉丸!
長屋に帰ったら、何でそんな事聞いたのか問いただしてやる!!!
足並み荒く長屋へ向かう三木ヱ門を、文次郎は首をかしげて見送った。
明日に続きます。(^^)
今日は片頭痛でダウンです。
もう、画面見れない・・・・(><;)
頂いたバトンは、明日答えさせていただきます^^
遅くなってスミマセン~~~!!!(><)
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