先日いきなり妄想が10年後に飛んだので、まだ金吾が学園にいるであろう5年後に縮めてみました。
「そんな泣かなくてもいいじゃないですか、七松先輩。」
泣いた小平太に、呆れ滝。
「何言ってるんだ滝夜叉丸!お前の髪一本だって私には愛しいんだぞ!!」
「なっ!!」真っ赤滝。
「もー!今後勝手に髪切るの禁止だ!!!」
駄々っ子小平太に、甘い滝。
「わ、分かりましたよ!」
「で、ここがどこなのか分かってますか、二人とも。」
「「あ」」
冷静な声が響く。
そこは敵陣のど真ん中で。
「あ、伊作の所に来てたミイラマン!」
「雑渡です、いい加減覚えてくれない?」
「すみませーん。」
「先輩謝ってる場合ですか!!」
「て言うか滝、先輩はもう卒業だって言ったじゃん。」
「は?だから今言う事ですかそれ!?」
「いやいや、人間関係において呼び方って重要だよ?」
「雑渡さんには関係ないでしょう!その前に暢気に会話に入ってこないで下さい!」
「目上の人を邪険にしちゃいけないぞ!滝。」
「おお、いい事言うね君。」
あははーと響いた笑い声に、険しい目つきの忍者達も毒気を抜かれたように項垂れた。
「お察しします・・・・。」
「「「「お互いに・・・・・。」」」」
その後。
忍術学園に遊びに来た滝夜叉丸に、金吾ビックリ!
「せ、せ、先輩!?どうしたんですかその髪!!!」
「切った。」
「そりゃ見れば分かりますよ!」
見上げるほど背が伸びた金吾に、滝夜叉丸は懐かしそうに微笑む。
「大きくなったな金吾。背負ってやっていたとは思えんよ。」
「・・当たり前です、今は体育委員長ですからね。」
「そうか!」
ぱあっと嬉しそうに笑う滝夜叉丸の笑顔に、懐かしい慕情が募る。
(ああそうだ、俺の初恋だ。)
いつも追いかけていた背中は、いつの間にか自分より小さくて。
どこか中世的な魅力を残したままの綺麗な顔に、ドキドキと胸が高鳴った。
「先輩、今でも女装得意そうですね。」
「そりゃどう言う意味だ。」
呆れたように笑うその仕草も変わっていないのに、全体的な雰囲気はずっと落ち着いている。
昔のように、自慢話も出てこない。
「金吾。」
「はい?」
ぽんぽん。
手を伸ばして頭を撫でる滝夜叉丸。
「本当に大きくなったな、可愛かったのに。」
目を細めた滝夜叉丸の手を取り、ニッと笑って見せる金吾。
きょとんと首をかしげる姿を、つい可愛いと思ってしまう。
見せ付けるようにその手に口付ける。
「今はカッコいいですか?」
忍者として働く滝夜叉丸の手は、擦り傷やたこがあるのにどこかしなやかで綺麗だ。
疲れたとき、引っ張ってくれた温かい手は変わらない。
頬すり当てれば、伝わる振動。
見下ろせば、笑う滝夜叉丸。
頬に当てた手が裏返り、胸倉をがっちり掴んで引き寄せられた。
間近に迫る滝夜叉丸の顔は、前髪を切って幾分精悍になったもののやはり綺麗だ。
瞬時に赤く染まる金吾の頬ぺちぺちと叩き、不敵に微笑む。
「金吾、私を口説くのは10年早いぞ。」
そっと頬から顎へ指の背を這わせると、金吾の身体は面白いほど跳ね上がった。
おかしそうに笑い、滝夜叉丸は金吾を放してやる。
「それにな、金吾。七松先輩とやり合う覚悟はあるのか?」
さらりと切られた前髪が揺れる。
その下の目は、確固たる自信に満ち溢れていた。
金吾は小さく嘆息し、力なく笑う。
「初恋は実らないものだと相場は決まってますからね、潔く諦めますよ。」
落胆したように肩を落として見せた金吾に、滝夜叉丸はもう一度微笑んだ。
「なんだ、つまらんな。久しぶりに会ったお前に、一瞬ドキリとさせられたと言うのに。」
その言葉に、思わず目を見開く。
少し恥ずかしそうに微笑む滝夜叉丸に、つい「脈あり?」と胸が高鳴った。
「ほ、本当ですか・・・・?」
身を乗り出して来た金吾に、笑いながら頷く。
「金吾、私を惚れさせるほどの男になれよ?」
挑発的なウィンクを飛ばす滝夜叉丸に、にやりと笑い返す。
「望む所です!」
金吾はきっと、いい男になると思います!(笑)