忍者ブログ

錆浅葱

小話とアニメ感想
MENU

ENTRY NAVI

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

敵襲



切られた腹が痛い、殴られた全身が悲鳴を上げる。
上手く下級生を逃がしたのは滝夜叉丸。
何も言わずとも、敵を引き付けている間に三人を引き連れて走っていった。
あうんの呼吸だな。
ひっそりとほくそ笑み、痛む腕で苦無を構えた。
敵は二人。
三人は倒した、だがこちらも傷を負ってしまったのだから、あまりいい戦況とは言えない。
だが、まだまだここを通す訳にはいかないのだ。
あの後輩達が無事逃げ延びるまでは、一歩たりとも引くことは出来ない!
忍び刀を振り上げ、駆け出した二人。
疲労と傷の痛みで目が霞む。
「おおぉぉぉぉぉ!」
腹から声をあげ、己を奮い立たせる。
森に響いた咆哮。
その時。
美しい放物線を描いた光が、襲い掛かる忍者の首を裂いた。
噴出した血飛沫に、その狙いが的確であった事を物語る。
息絶えて転がる肢体を避け、地を蹴り一旦間合いを取るもう一人の忍び。
背に感じる、胸を焦がす気配。
「何故逃げなかった?滝夜叉丸」
「三之助が迷ってしまう事まで計算に入れたら、先輩だけでは時間稼ぎが大変だと思いまして。」
まだ少し荒い息を整えながら、微笑む。
泥と小さな傷が走っているが、その笑みは美しかった。
「素直に心配だったと言えんのか?」
そう言ってもらえた方が燃えるんだけどな。
だが滝夜叉丸は甘くは無い。
少し頬を染めはしたものの、目で叱るように睨まれた。
「まあいい、お前がいれば守りたいから死ねない。それに、カッコいい所を見せたいから頑張れるしな!」
本当に不思議だが、滝夜叉丸の姿を見た途端痛みを感じなくなったのだ。
戻ってきてくれた滝夜叉丸を、今すぐぎゅっと力いっぱい抱きしめたい。
だから早くこいつを倒してしまいたい。
闘志も燃え始めた。
戦輪を構えた滝夜叉丸に背を預け、かっと目を見開く。
ぼやけていた視界は、自分でも信じられないほどスッキリと晴れていた。
「滝夜叉丸、お前なら安心して背中を任せられるよ。」
それが今の本心。
四年生にしてあの実力、自惚れだと人は言うがそれは違う。
努力の上に成り立つ自信なんだ。
だからこそ、信じられる。
「嬉しいです・・・・好きだと言われるよりもグッと来ますね。」
笑みを含んだその声に、こっちがグッと来る。
さあ、とっとと片付けよう。
泣きながら待っているであろうあの三人に、二人笑顔で『ただいま』と言わなければならないから。


「行くぞ!」
「はい!」


体育委員会で鍛えた私達の実力、とくとご覧にいれようか!
PR

過去の遺物

こへ滝にはまりたての頃、お絵かきしたのが出てきました。(--;)
お絵かき久しぶりだった事もあり、ひ土井ですね。(涙)
でも今日使おうとした絵が失敗に終わったので、使いまわします!
だって、エコだもん。(ほげげ)

では、一日一こへ滝!
今日も頑張りますvv(^v^)






「滝夜叉丸~vそんなに顔を赤らめて、私を見つめるなんて助平だな!」
「は?いきなり何を仰るんですか!!??私は先輩の事など見ていませんよ!」
「うそだー、こんなに真っ赤だ。きっと私の事を見て、いやらしいことでも思い出してたんだろう?」
「お、思い出してなんか!!」
「じゃあ、想像した?」
「~~~~~~~!!!」
きーっと今にも発狂しそうな滝夜叉丸と、それを面白がる小平太。
塹壕堀に少し飽きたのか、滝夜叉丸をからかう事で退屈しのぎをしているように見えた。
しかしまあ・・・・。
「だからさ、俺達は空気か?」
三之助は委員会活動の休憩中であることを、傍若無人な委員長に言いたかった・・・・・が、言えなかった。
言えるはずがない。
そんな時、四郎兵衛が不思議そうに首をかしげる。
「七松先輩ー!先輩はどうして滝夜叉丸先輩が見てるって気付かれたんですか??」
きょとんとした目で見上げてくる四郎兵衛を見下ろし、小平太はにんまりと笑った。
「やっぱり気配で分かるんですか?」
次いで金吾までも問いかけてきた。
「だからお前達!私は見ていないといっているだろう!!」
肩を震わせながら叫ぶ滝夜叉丸。
やっと下級生の存在を思い出したらしい。
小平太のペースにはまると、下級生の存在を忘れてしまうのは滝夜叉丸の意外な一面だ。
小平太は半分わざとやっているのだから、性質が悪い。
「で?なんで分かったんすか?」
「三之助!お前まで!!」
もう味方は居ないと項垂れた滝夜叉丸を引き寄せ、小平太は満面の笑みで答えた。




「そんなもの、私が滝夜叉丸を見ていたからに決まっているだろう!」






大きな笑い声と、やっぱりねと言わんばかりのため息が4つ漏れた。

ちょっと、いやんvvな所もあるみたいです

その手に捕まれば、もう逃げられないと分かっている。
だけどその誘いはあまりに甘美で、逃れたいとは思わない。
優しいように見えて、酷く残酷な手なのだ。




女装して、町へ向かう。
そうしてあらかじめ定められた人物から、上手く情報を得る。
それが今日の課題。
もともと女装の得意な滝夜叉丸と喜八郎。
それに加えて、今ではタカ丸が編入した事で更にグレードアップしていた。
女装にいまだ抵抗を覚える三木ヱ門ですら、タカ丸の手伝いもあって見事に出来上がった女装に、しばし言葉をなくしていた。
「自分に見とれるなよ、三木ヱ門。」
めちゃくちゃ気持ち悪いと、おどけた声で喜八郎が笑う。
必死に抗議する三木ヱ門を無視して、喜八郎は作法委員長仕込みの見事な化粧を滝夜叉丸に施す。
「滝夜叉丸の化粧は楽しいよ。」
無表情ながら、その醸し出す雰囲気はいつになく楽しそうだ。
いや、塹壕を掘っている時と同じと言った所か。
正直この面子が揃うと、無駄に口を開くと収拾がつかなくなる事を滝夜叉丸は最近学んだ。
今日の課題は早く片付けてしまいたかった。
放課後は委員会が待っているから。
毎度毎度備品の整備や、堀りまくった塹壕の処理を後回しにしていた為、昨日用具委員長の食満留三郎よりじきじきにお達しが来たのだ。
今日の放課後までに体育委員がちゃんと後処理をやる気を見せなかったら、今後一切の体育委員会が破壊した用具・備品・床や壁も修復の手伝いはしないと。
いくらなんでも壁や床は難しい。
しかもそのお達しは、小平太を通り過ぎて滝夜叉丸に直接回ってきた。
留三郎も分かっているのだ、小平太に言った所で無意味だと言う事を。
険しい顔つきで4年の忍たま長屋にやってきた留三郎だが、真っ青になって平身低頭して謝る滝夜叉丸に逆に頭を下げた。
「すまん、俺がちゃんと小平太に分からせる事が出来んばかりに。」
留三郎とて、小平太の傍若無人な態度の一番の被害者は滝夜叉丸であることを知っている。
だがこうでもしないと、埒が明かない。
ここは滝夜叉丸に犠牲・・・・頑張ってもらうしかない。
もう一度頭を下げて、留三郎は長屋を後にした。
が、帰り道喜八郎のターコ5号に落ちたらしい。
「・・・・さすが、仙蔵の後輩だ・・・・。」
一体いつの間に掘ったのか。
これぐらいは甘んじて受けようと、留三郎は疲れた顔で覚悟を決めたのだった。


そんな経緯で、町まで出なければならない課題など今日は御免被りたかったが授業だから仕方がない。
とにかく少しでも早く終わらせて、備品の修理と塹壕を埋めなければ!
「喜八郎、もういいだろう?私は先に行くぞ!」
「え?ちょっとー、紅がまだだよ!」
がしっと紅をつかみ、足並み粗く教室を出る滝夜叉丸。
まだ化粧を終えていない喜八郎は、それ以上は追ってこなかった。
道すがら、金吾と出くわす。
呆けて見上げてくる金吾に、今日の委員会活動の内容を伝える。
「いいか、少しでも早く集まって頑張ろうな!」
「は・・・はい。」
あんぐりと口をあけたままの金吾を残し、再び歩き出す。
その背を見送り、金吾はやっと息を吐いた。
「滝夜叉丸先輩綺麗だったねー。」
にっこりと笑う暢気な喜三太の言葉に、頷く。
「あの姿・・・・七松先輩に見つかったら・・・・。」
繰り広げられるであろうあの居たたまれない空気。
滝夜叉丸がいつもの姿に戻るまで、小平太と会いませんよーに!と、金吾は願った。
その場に居合わせる生徒達の為に。
だが、小平太の動物的感は凄かった。
草履を履いた滝夜叉丸を目ざとく見つけ、茂みの中に掻っ攫う。
当の滝夜叉丸は一体何が起こったのか、わかりたくなくても分かってしまった。
ぐいぐい引っ張られ、ぎゅっと力強い腕に抱きしめられる。
 「滝みーっけ!」
「めっかっちゃった・・・・。」
はぁぁぁっと、大きく嘆息し背中越しに小平太を振り返る。
「先輩、今日の委員会絶対に備品の修理と塹壕の後処理ですからね!分かってます?」
眉を吊り上げて釘を刺す滝夜叉丸の、美しく化粧の施された顔をまじまじと見つめる小平太。
「うあー、滝って本当美人だなぁ・・・・。」
ぐいっと近づく顔に赤面し、嫌そうに顔を顰めた。
「そんなこと言っても、今日はバレーもマラソンもしませんよ!なによりって!うわ!」
「でも紅が足りない。」
強引にあごを引かれ、上向かされた滝夜叉丸の口をふさぎ、手にしていた紅を奪う。
柔らかな唇を啄ばみ、その感触にほくそ笑む。
チロチロと下唇を舐れば、小平太の袖を握る力が増す。
舌先で唇を何度もなぞり、吸い上げた。
「んっ・・・・ふぅ・・」
漏れる扇情的な声に、小平太も流石に自粛する。
身を引いた小平太を見上げる目元は赤らみ、潤んだ瞳はため息が漏れるほど愛らしかった。
薄く開いた唇に、そっと紅を乗せる。
綺麗に伸ばせば、より一掃美しくなった滝夜叉丸の姿。
そして小平太の余計な悪戯の所為で、その色香はさらに増してしまっていた。
「ああ、私とした事が・・・・しくじった。」
心底困った顔で項垂れた小平太に、赤い頬を押さえながら滝夜叉丸は首をかしげる。
「い、一体何をしくじったと仰るんですか?」
自分の女装がいけなかったのか、それとも紅の引き方をしくじったのか。
理由の分からぬ滝夜叉丸は項垂れた小平太の顔を覗き込む。
上目遣いで滝夜叉丸を見つめる目と鉢合わせ、余計に顔が赤らむ。
時折見せる、悪戯っ子のようなその表情は反則だ。
慌てて身を引いた滝夜叉丸を再び捕まえ、小平太は露になっている耳朶に口付けて囁く。
「こんなに色っぽくて、扇情的な姿誰にも見せたくはないんだよ。」
「せ!扇情的って・・・あ・・・な!」
慌てふためく滝夜叉丸を押さえ込み、ぎゅっと抱きしめた。
「滝夜叉丸、このままお前を外には出せないよ。いや外だけじゃない。今のお前は誰にも見せたくない。」
いつにない低い声音の小平太。
甘美な疼きは、背筋を痺れさせていく。
高鳴る心音に、死んでしまいそうだと滝夜叉丸は思った。
ずるい、こんな殺し文句はずるい。
授業も委員会も、全て投げ出してこの腕に落ちたくなる。
そんな気持ちも知っているんだ、この男は。
本当に、ずるくて、愛しい。


「お前は私だけのものだろう?」


その手に捕まれば、もう逃げられないと分かっている。
だけどその誘いはあまりに甘美で、逃れたいとは思わない。
優しいように見えて、酷く残酷な手なのだ。

花火と体育委員会


夏の花火


委員会活動後、小平太が懐から大きな包みを取り出した。
くたくたに疲れていると言うのに、四郎兵衛と金吾はすぐに飛びつく。
目を輝かせ見上げてくる後輩に満足したのか、小平太は得意げにその包みを広げた。
「わぁ!」
「すごーい!」
感嘆の声を上げた二人の後ろから、三之助がひょっこり顔をのぞかせる。
「あ。花火っすよ先輩。」
滝夜叉丸を振り返り、泥のついた顔で告げる。
包みから溢れんばかりの大量の花火。
一体いくらかけたのか。
小さく嘆息し、円の中に混じる。
「良かったな四郎兵衛、金吾。昨日言ったことがもう今日叶って。」
どれから始めようかと花火を手にしていた二人はそろって顔を上げ、大きく頷いた。
「なんだ、お前たち花火がしたかったのか?」
にっと笑う小平太に、昨日二人がみんなで花火をしたいと言っていた事を教えてやる。
「そりゃ好都合だったな!よし!目いっぱい花火するぞ!!!」
「「おおー!」」
「おー」
「先輩、水を用意してきますから!それまではまだ火を付けちゃ駄目ですからね!」
「えー。」
「「えー!」」
四郎兵衛と金吾が口を尖らす前に不満を漏らした小平太。
その姿は大きな子供だ。
「俺も手伝います。」
あきれ果てる滝夜叉丸に、三之助が声をかける。
「いや、お前がついてきたら余計に手がかかりそうだからいい。」
力なく笑い、三之助に小平太が先走って火をつけぬよう見張りを言い渡す。
火打石をてにうきうきしている小平太をけん制し、滝夜叉丸は井戸へ急いだ。
手桶に水を張り、重たい桶を抱えあげた。
「何してんすか?」
年の割には大人びた声が、背後からかけられる。
「きり丸か。今から体育委員会で花火をすることになってな。」
「へぇ。」
「花火大会のチケット売りのアルバイトするなよ。」
笑いながら見下ろせば、思いのほか強い目が見上げていた。
「んなしょぼい花火じゃ客は呼べませよ。じゃ。」
いつにもまして怜悧なきり丸の表情に、滝夜叉丸は首をかしげる。
皮肉屋で冷静だが、あんなに捻くれた態度を訳もなくする子ではない。
何かあったのか?
きり丸からはあまり好かれている等と思ったことはないが、金吾のクラスメイトだし気になる。
抱えた桶をいったん置き、立ち去ろうとするきり丸の肩をつかんだ。
「おい、きり丸。何かあったのか?」
「別に、何もないっすよ。離して下さい。」
感情を見せない硬い声が、余計に気になった。
何もないという態度ではない。
もっとちゃんと話しを聞こうと、滝夜叉丸がしゃがみこんだ時微かな気配。
はっとして植え込みを振り返れば、そこには小平太と同室の中在家長次の姿。
(そう言えば、きり丸は図書委員で・・・)
ここは同じ委員会の先輩に任せた方がいいのだろうか?
物静かな目を見つめれば、無言のまま頷かれる。
その意図に答えるように滝夜叉丸も頷き、立ち上がった。
うつむいたままのきり丸の頭を一度だけなでて、再び桶を抱え踵を返した。
長次がきり丸に歩み寄り、その目を覗き込む姿を確認して校舎の角を曲がる。
小平太が金吾を心配する事と同じで、長次もきり丸の変化に気づいていた。
あまり人を寄せ付けない雰囲気のあるきり丸だが、こうやって気にかけてくれる人がいる事に何故かホッとする。
人を寄せ付けない。
それは滝夜叉丸にも覚えのある感情だったから。
滝夜叉丸にとって、その見えない壁を取っ払ったのは小平太だ。
きり丸にとって、長次がそんな人になってくれれば良いと心から思った。
「せんぱーい!遅いー!」
「そうだそうだ!遅いぞ滝夜叉丸!」
後輩に混じって一緒に叫ぶ小平太。
その姿が、妙に可愛くて滝夜叉丸は肩をすくめて微笑んだ。
「はいはい、お待ちどうさまでした。さ、花火開始だ!」
「「「いえーい!」」」
「おー」
「三之助、お前ずれっぱなしだな。」
全員違う花火を手に持ち、いつの間にか立てられたろうそくに近づける。
「そんないっぺんに火をつけようとしても・・・」
小平太の腕を制した時、金吾の花火に火がついた。
「おお!」
うれしそうに笑う金吾。
その火が今度は四郎兵衛と三之助の花火に火をつける。
シューっと夏らしい音が響き、火薬の匂いが辺りに広がった。
その美しい光景に、滝夜叉丸も見とれる。
「なあ滝・・・。」
珍しく遠慮がちにかけられた声。
「はい?」
驚いて見上げれば、少し顔を赤らめた小平太が力なく笑っている。
どうしたのかと首を傾げれば、花火に夢中の後輩を背にして口付けられた。
「!!」
驚きで声がでない滝夜叉丸に、小平太は自分の腕に置かれたままの一回り小さい手を愛おしそうに包んだ。
「だって、滝が可愛かったんだもん。」
悪びれることもなく、赤い顔で笑う小平太に怒る気も起きない。
と言うよりも、さっきの長次の姿が思い出されて、もっと小平太のそばに行きたいと素直に思えた。
自分を見つけてくれた人だから。
じわりと近寄り、小平太に寄り添う。
着物越しに感じる体温が、心地よくて力が抜けていく。
「先輩の隣は、一番緊張して一番安心できる場所なんです。」
身を預ける滝夜叉丸のあどけない表情に、小平太もやわらかい笑みを浮かべた。
「そんなに無防備だと、奪いたくなる。」
きゃきゃっとはしゃぐ後輩たちを見つめ、穏やかじゃないことを口走る。
全くもう、と苦笑した。
「私には、これ以上先輩に奪われるものなど残っていません。」
全部持っていったくせに。
そう声に出さずに呟かれては、小平太もたまらない。
「あまり煽るなよ、せめて花火が終わるまではいい先輩でいさせてくれ。」
滝夜叉丸の額に可愛い音を立てながら口付け、小平太はそっと見えぬようにその細い腰を引き寄せた。
「後で二人だけで線香花火でも静かにしよう?」
「いいですね、私は派手な花火より線香花火の方が好きです。」
微笑む滝夜叉丸を早く抱きしめたい。
小平太ははしゃぐ3人の手元に残る花火の数に、買いすぎだったと苦笑した。



その頃。



「次屋先輩、これくらいはしゃいでれば大丈夫ですか?」
「あー。うん、多分大丈夫だろう。」
「何か気を使いすぎて楽しくないです。」
「四郎兵衛そこは我慢だ。滝夜叉丸先輩にいつも助けてもらってるだろう?」
疲れたように笑う三之助に、四郎兵衛は小さな声で答えた。
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・早く終わらせよう。」
無言で頷く金吾と四郎兵衛。
その向こう側でいちゃつく二人。
今日も体育委員会は、絶妙なバランスで成り立っている。

お土産

年に一度の夏祭りなのに、4年生は三木ヱ門と滝夜叉丸の喧嘩などの不祥事、及び喜八郎の塹壕の処理などで居残り。
委員会で夏祭りに行こうと約束していたのに、と落ち込む滝。
とりあえず、帰ってくる頃に委員会室においでと言われていたので向かうと。



「先輩先輩!お土産の串焼きです!」
嬉しそうに四郎兵衛が駆け寄ってきた。
だがその手や口元には串焼きのたれが、べっとりとついていた。
「四郎兵衛、べとべとじゃないか!こっちを向け!」
手ぬぐいを引っ張り出し、ぐいっと四郎兵衛の顔を上向かせる。
丸い頬にも甘そうなたれが飛び散っている様に、滝夜叉丸は知らぬ内に苦笑をもらしていた。
「お前も2年生なんだぞ?金吾に見られたら恥ずかしいだろ?」
「・・・・・・はい。」
少し顔を赤らめて頷く。
部屋の中では三之助が食べているたこ焼きを、金吾が強請る姿。
鳥の雛のように口を開けて待っている。
「ほい。」
間の抜けた掛け声と共に、金吾の口の中にたこ焼きを放り込む。
「おいひぃれす!」
嬉しそうに食べる金吾の姿に、夏祭りが楽しかったのだと容易に想像できた。
みんな少し子気分が高揚しているようだ。
そんな中。

omiyage2.jpg







滝夜叉丸と四郎兵衛の姿をじっと見つめる小平太。
滝夜叉丸の姿に、やっぱり全員で行きたかったなぁなどと思いつつ・・・
ちょっと世話焼きすぎじゃないか?
と、少々妬いているようだ。
(串焼きのお土産だって、私が買ったのに。)
小さい、小さい小平太。
夏祭りは楽しかった、だがやはりみんなどこかで寂しいと思っていた。
それは下級生であればあるほど。
金吾と四郎兵衛は何故か二人で手をつないでいたし。
三之助は恐ろしい事に、一度も道に迷わず小平太の後ろをちゃんとついて来た。
が、恐ろしいほど背中を見つめられていたので周りの視線も痛かったのだが…。
大量に買い込んだ串焼き。
早々に買い物を終えて帰ってきたのだ。
みんなで食べるために。
(まだ一度も私を見てないよ、滝夜叉丸。)
小平太は串焼きを一本頬張り、腰を上げた。

omiyage3.jpg







どーん。
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・!」
「な、何してるんですか!?」
じとっと鬱陶しい眼差しで見つめてくる小平太。
言わんとする所を察した滝夜叉丸は、がっくりと肩を落とした。
大きなため息をつき、ふっと微笑む。
「大きな子供ですね。」
肩を揺らして笑いながら、小平太の口元についたたれを拭ってやった。
にんまりと嬉しそうに笑い、呆気にとられている四郎兵衛を抱え上げる。
「じゃ、みんなで串焼きを食べよう!」
「そ、そだ!とうもろこしもありますよ!先輩!」
ねーっと小平太と笑い合う。
しかし。


「お前達何してるんだ?」


ひくりと喉が鳴る滝夜叉丸。

「いや、ノリで・・・・」
「やっといた方がいいかなぁって。」

部屋の中では、口元にたれをつけた金吾と三之助が待ち構えていたのだった。

× CLOSE

カレンダー

05 2025/06 07
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30

メールフォーム

感想などありましたらこちらから。

感想などありましたらこちらから。

プロフィール

HN:
ハヂ
性別:
女性
自己紹介:
忍たま出戻り組。以前は伝半・清団でしたが今回はこへ滝にすっころぶ。その勢いで文三木や長仙・留伊・雑伊が気になり始めました。(気が多い)
毎日夕方10分間の為に、色々と頑張れる。

バーコード

カウンター

× CLOSE

Copyright © 錆浅葱 : All rights reserved

TemplateDesign by KARMA7

忍者ブログ [PR]