とうとう滝夜叉丸の夏休みも、最終回です。(笑)
学園へ帰る日の朝、明らかに落ち込んでいる親当。
朝食の準備をするその背中には、哀愁が漂っている。
しかも。
「滝、お前まで酷い顔になってるぞ。」
苦笑をもらした小平太の眼下、見るからに寂しそうな顔で俯く滝夜叉丸の姿。
「だって・・・・。」
「また来年おいで。」
自分の育った家庭を気に入ってくれた事が嬉しい小平太は、優しくその頭を撫でてやる。
その袖をちょんと握り、じっと見上げる目は少し潤んでいた。
「絶対ですよ・・・・。」
「勿論、私は約束を破った事は無いぞ。」
「知ってます。」
そっと肩を抱き寄せてやれば、小平太の胸に顔を埋めてじっと寂しさを堪える。
その姿がまた愛しい。
「ほら、兄上には笑顔で接してくれ。」
「・・・・・はい。」
ごしごしと袖で涙を拭い、顔を上げた。
きゅっと結んだ唇と、キリッと上がった眉。
深呼吸を二回。
「おはようございます!兄上!」
にっこりと満面の笑みで土間に下りる滝夜叉丸に、親当の目は潤む。
「滝夜叉丸ー・・・・。」
「ほらほら、まだ泣くんじゃないですよ兄上。」
孝廉のなぐさめに頷いて、親当は必死に笑う。
「酷いですね、その顔。」
「孝廉!」
「あははー、ほら兄上滝夜叉丸も笑いましたよー。」
茶化した孝廉の言葉通り、滝夜叉丸も自然に微笑む。
その笑顔につられ、親当も微笑んだ。
「今日の朝ごはんは奮発したぞ!いっぱい食べていきなさい。」
「はい!兄上!」
元気の良い返事に相好をくずし、親当は白米を山盛りによそった。
出発の時、見送りに出た七松家の面々。
初めに葉菜代が泣き出し、一気に別れの寂しさが募った。
「小平太、滝夜叉丸、二人とも元気でな。」
「はい、兄上。」
にっこり笑って答える小平太の隣、俯く滝夜叉丸の頭をそっと親当が撫でる。
「元気でな。また帰っておいで。」
その言葉に、とうとう我慢できなくなった滝夜叉丸が泣き出した。
「あ、兄上ぇ~・・・・・」
「た、滝夜叉丸ぅー・・・・」
「あーあ。」
「泣いちゃった。」
「「うわぁぁぁぁん!」」
帰りの道中、小平太は滝夜叉丸をなだめる事に尽瘁した。